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121 第109話

17:23
 
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ー瞬間催眠なんか誰がどう考えてもただのオカルト話だ。誰も取り合ってくれない。
ーだが相馬周。あの男なら話を聞いてくれるはずだ。
ーいや...。そもそもあの男はこの事を調べるために俺に接近してきた。
ーそれをうっすらと感じていたから、俺はあの男のオファーに乗った。
ーそう。縋る思いで。
井戸村は石大病院に向かうタクシーにあった。
窓からは流れゆく金沢の夜の街並みが見える。
ーあのときの俺は目標を失っていたんだ。
ー生きる糧を失っていただけなんだ。
ーぽっかりと空いてしまった心の穴。それを埋めることができればそれで良かった。
石大病院の病院部長のポストを斡旋した男の姿が、井戸村の頭から離れない。
ー別に金が欲しかったんじゃない。
ー寂しかったわけでもない。
ーただ理由が欲しかった。
ー生きる理由。働く理由が欲しかったんだ。
タクシーを降り職員通用口から再び医学部に戻った彼は暗い廊下を進んだ。
ー自分が生きている証拠として、金という数字がただ銀行口座に貯まる。
ー貯まったところで何をするわけでもない。
ー俺には資産を託す子供がいるわけでもないからな。
自販機でコーヒーを買う音
「井戸村さん。僕に話って何ですか。」
背後から声をかけられた。
「その声は相馬さんですね」
「はい。」
「瞬間催眠…。」
「坊山さんから聞いたんですか。」
「はい。」
井戸村は振り返った。相馬が立っていた。
ーなんだ...。まだ30前後の若者なのか。
電話とメールでしかやり取りしたことがなかった井戸村は、相馬の意外な外見に正直なところ肩をすかされる思いがあった。
「井戸村さんも思い当たる節があった?」
「あ、はぁ...。自分は何を研究しているかは聞かされていませんでした。ただ天宮先生、小早川先生、曽我先生そして光定先生の研究環境を整えろとだけ言われてました。」
「誰に?」
「わかりません。」
「わからない?」
「自分は名前も知らないんです。顔もしっかりと覚えていない。わかるのは男と言う性別だけです。」
「という事はあなたはその人間と会ったことはある。」
「はい。」
「素性の分からない人間の言うことを聞く。…なるほど脅迫でしたか。」
「…それに近い部分もあります。」
「あなたとその男とのそもそもの接点は。」
「東一繋がりです。」
「同窓生。」
「彼はそう言って私に近づいてきました。」
「素性を明かさない時点で、それも本当かどうかは分かりませんね。」
「相馬さん。あなたこそ何者なんですか。」
「ただの人材コンサルタントです。」
「いや違う。あの男と同じ臭いがする。」
相馬は黙った。
「自分の過去と現在を全て分析して、断りようもない魅力的な未来を提示するこの手法。あの男と同じです。」
「…井戸村さん。」
暗がりに相馬の目が光ったように見えた。
「貴重な情報ありがとうございます。」
「はい?」
「となれば貴方の身にも危険が及ぶ恐れがあります。」
「なぜそれを…。」
「井戸村さん。貴方は今日はこのまま自宅へ帰って下さい。明日からは普段通り過ごして下さい。貴方の身の安全はこちらで確保しましょう。」
「身の安全を確保?ですか?」
「はい。」
「え?何者何ですか…。あなた。」
「言い方は悪いですが井戸村さんは私にとって貴重な商品です。商品に傷がつくなんて事になったら、私も商売あがったりですよ。」
「はぁ…。」
「先生方の研究環境の整備を命じられていたんでしたよね。」
「は、はい。」
「その先生方が立て続けに亡くなってしまった今、指示が来るはず。」
「はい。今はその指示待ちです。」
「向こうからコンタクトがあったら、こちらから派遣する人間にそれを報告して下さい。」
「派遣する人間?」
「はい。」
「誰ですか。それは。」
「ご心配なく。多分ピンときます。」
もう夜は遅い。お互い休みましょう。相馬はそう切り出した。
「光定先生は?」
「先生は今日はここに泊まるようです。」
「瞬間催眠の研究ですか。」
「ま、そんなところですか。」
「なんでそんな平然としてるんですかあなたは。」
「え?」
「国を滅ぼす研究ですよ。光定先生がやっている研究は。」
「瞬間催眠が国を滅ぼす?何で?」
「あ、いえ...どう滅ぼすのか分かりませんが...少なくともそういう意図を持った研究だっていうのはさっき気付きました。」
「貴方と接触していた男が匂わせていたんですか。」
「はい。何かこそこそしてるとは思ってました。やたらと各方面に調整を求めてくるんです。今考えるとあれがひょっとしてと思い返されることもある。」
「…。」
「事実、人が死にすぎですよ…。しかも立て続けです。」
「井戸村さん。」
「…何です。」
「片足突っ込んだらもう引き返せないんです。ことが終わるまでは何としても踏ん張って下さい。」
「...。」
「武器は持ってるだけなら怖くもなんともない。但し意図を持った瞬間それは脅威になる。」
どことなく余裕のある振る舞いを常に見せる相馬だったが、この時の彼は明らかに顔つきが違っていた。
「脅威...。」
「我々は全力であなたを守る。だからあなたも全力で我々に協力してほしい。脅威からこの国を護るために。」
この言葉を聞いた瞬間、井戸村は悟った。
相馬が何者であるかを。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「光定を泳がす?」
「はい。」
「その真意は。」
「光定はコミュの相馬の協力者となりました。同じコミュの人間同士、連携して当初の計画通りテロ行為の準備を進めるということです。」
「コミュの相馬?」
「はい。」
「相馬の奴、うまく光定を取り込んだな。」
「はい。テロの予定日は5月3日。今週の金曜です。ギリギリまで光定を泳がせて周辺の連中を炙り出し、一斉検挙としたく存じます。」
「わかった。でも無理は禁物やぞ。あまりギリギリまで引っ張ると撃ち漏らした奴が暴発する可能性がある。」
「承知しています。よって最終的な判断については。岡田課長。あなたに判断を仰ぎます。」
「わかった。それについては理事官にもマサさんから報告しておいてくれ。」
「了解。」
「マサですか。」
電話を切った岡田に声をかけたのは三好だった。
「はい。」
「ギリギリまで引っ張るって、どこまで引っ張る気なんですか。」
「予定日は5月1日。今週の金曜。」
「時間は?」
岡田は首を振る。
「仮に5月1日になったと同時に決行という段取りなら、前日の午前には何らかの判断を求められる。」
「明後日の午前に百目鬼理事官から指示が降りるとすれば、その手続きにかかる時間を加味して…。」
「リミットは明日いっぱいですか。」
腕時計に目を落とした岡田は呟いた。
「27時間…。」
「厳しいですね。」
「まさかテロなんてもんをこの国で計画しとるとはね…。」
「しかも金沢駅。」
「こんなクソ田舎の駅でテロを起こす。そんなモンのために我が国に部隊を相当数隠密上陸させる。」
「どう考えても、ただのテロじゃないですわな。」
沈黙したふたりの前に一棟の古びたマンションがあった。
彼らはお互いの見合って頷いた。
「こちら岡田。今から対象と接触する。」
「了解。」
富樫の応答を受け、二人は眼前のマンションに吸い込まれていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ビショップは空閑。ナイトは朝戸。クイーンは光定…。」
「はい。」
「チェスじゃん。」
「はい。」
「そうだとすれば他にも同じような面子がいるってわけか。」
「キング。ルーク。ポーンです。」
「気になるのは大将のキングだね。」
「はい。」
「そこのところ徹底的に調べてくれるかい。」
「それが手がかりらしきものがないんです。」
「…。」
「相馬はギリギリまで光定を泳がせて、尻尾を出すところを捕まえることを自分に提案しました。」
「泳がせる…。」
「リミットは27時間。27時間後締め切ります。岡田課長も承認済みです。」
「わかった。それまではそちらに任せる。」
「ありがとうございます。」
「朝戸と光定の張り付きは問題ないんだな。」
「はい。」
「空閑は。」
「塾は臨時休業。現在行方を追っています。」
「空閑は朝戸と接触する可能性もある。おそらく金沢市内もしくは近郊にいるはずだ。寝ずに探せ。」
「はい。ですが何分にも人員が不足気味でして。」
「わかってる。それは金と気合でカバーしろ。他部署に協力を仰ぐわけにはいかない。」
「もちろんです。」
「あ、そうだ。」
「何です?」
「捜査員のサングラス着用、徹底してね。」
「はい。」
電話を切った百目鬼は携帯電話を床に叩きつけた。
「クソが!」
「どうする…。急にタイムリミットが設定されちまったぞ…。27時間。27時間だ…。落ち着け。落ち着け、俺…。」
「だから私が東倉病院のヘマを埋め合わせる結果を出せばそれでいいんでしょう。そうすりゃ大蔵省もグチグチいってこない。」
「おい…。」
「大蔵省であろうが、防衛省であろうが、察庁内であろうが文句は言わせません。結果出します。」
「いつまでに。」
「3ヶ月。」
「長い。」
「じゃあどれだけが希望ですか。」
「1ヶ月。」
「無理です。」
「やれ。それくらい早くないと説得力がない。」
「じゃあやります。」30
「1ヶ月どころじゃねぇよ。あと27時間だよ。」
床に落ちた携帯を拾い上げた百目鬼はそれをポケットにしまった。
「最悪を想定してやるだけやりました。あとは俺も現場を信じて27時間走り続けるだけですね。」
ドアをノックする音
「どうぞ。」
「失礼します。ご依頼のものをお持ちしました。」
手渡されたマチ付きの封筒を開き、彼はそれに目を落とした。
書類の右端には機密とハンコが押してある。
「官房長は何と?」
「閲覧後速やかに処分されたいとだけ。」
「わかった。ありがとう。」
「それでは。」
ドアを閉める音
百目鬼が手にする書類。その表紙にはこう書かれていた。
「平成27年 仁川征爾 保護経過観察報告書」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【公式サイト】
http://yamitofuna.org
【Twitter】
https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVM
ご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。
皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。
すべてのご意見に目を通させていただきます。
場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
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121 第109話

オーディオドラマ「五の線3」

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ーだが相馬周。あの男なら話を聞いてくれるはずだ。
ーいや...。そもそもあの男はこの事を調べるために俺に接近してきた。
ーそれをうっすらと感じていたから、俺はあの男のオファーに乗った。
ーそう。縋る思いで。
井戸村は石大病院に向かうタクシーにあった。
窓からは流れゆく金沢の夜の街並みが見える。
ーあのときの俺は目標を失っていたんだ。
ー生きる糧を失っていただけなんだ。
ーぽっかりと空いてしまった心の穴。それを埋めることができればそれで良かった。
石大病院の病院部長のポストを斡旋した男の姿が、井戸村の頭から離れない。
ー別に金が欲しかったんじゃない。
ー寂しかったわけでもない。
ーただ理由が欲しかった。
ー生きる理由。働く理由が欲しかったんだ。
タクシーを降り職員通用口から再び医学部に戻った彼は暗い廊下を進んだ。
ー自分が生きている証拠として、金という数字がただ銀行口座に貯まる。
ー貯まったところで何をするわけでもない。
ー俺には資産を託す子供がいるわけでもないからな。
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「井戸村さん。僕に話って何ですか。」
背後から声をかけられた。
「その声は相馬さんですね」
「はい。」
「瞬間催眠…。」
「坊山さんから聞いたんですか。」
「はい。」
井戸村は振り返った。相馬が立っていた。
ーなんだ...。まだ30前後の若者なのか。
電話とメールでしかやり取りしたことがなかった井戸村は、相馬の意外な外見に正直なところ肩をすかされる思いがあった。
「井戸村さんも思い当たる節があった?」
「あ、はぁ...。自分は何を研究しているかは聞かされていませんでした。ただ天宮先生、小早川先生、曽我先生そして光定先生の研究環境を整えろとだけ言われてました。」
「誰に?」
「わかりません。」
「わからない?」
「自分は名前も知らないんです。顔もしっかりと覚えていない。わかるのは男と言う性別だけです。」
「という事はあなたはその人間と会ったことはある。」
「はい。」
「素性の分からない人間の言うことを聞く。…なるほど脅迫でしたか。」
「…それに近い部分もあります。」
「あなたとその男とのそもそもの接点は。」
「東一繋がりです。」
「同窓生。」
「彼はそう言って私に近づいてきました。」
「素性を明かさない時点で、それも本当かどうかは分かりませんね。」
「相馬さん。あなたこそ何者なんですか。」
「ただの人材コンサルタントです。」
「いや違う。あの男と同じ臭いがする。」
相馬は黙った。
「自分の過去と現在を全て分析して、断りようもない魅力的な未来を提示するこの手法。あの男と同じです。」
「…井戸村さん。」
暗がりに相馬の目が光ったように見えた。
「貴重な情報ありがとうございます。」
「はい?」
「となれば貴方の身にも危険が及ぶ恐れがあります。」
「なぜそれを…。」
「井戸村さん。貴方は今日はこのまま自宅へ帰って下さい。明日からは普段通り過ごして下さい。貴方の身の安全はこちらで確保しましょう。」
「身の安全を確保?ですか?」
「はい。」
「え?何者何ですか…。あなた。」
「言い方は悪いですが井戸村さんは私にとって貴重な商品です。商品に傷がつくなんて事になったら、私も商売あがったりですよ。」
「はぁ…。」
「先生方の研究環境の整備を命じられていたんでしたよね。」
「は、はい。」
「その先生方が立て続けに亡くなってしまった今、指示が来るはず。」
「はい。今はその指示待ちです。」
「向こうからコンタクトがあったら、こちらから派遣する人間にそれを報告して下さい。」
「派遣する人間?」
「はい。」
「誰ですか。それは。」
「ご心配なく。多分ピンときます。」
もう夜は遅い。お互い休みましょう。相馬はそう切り出した。
「光定先生は?」
「先生は今日はここに泊まるようです。」
「瞬間催眠の研究ですか。」
「ま、そんなところですか。」
「なんでそんな平然としてるんですかあなたは。」
「え?」
「国を滅ぼす研究ですよ。光定先生がやっている研究は。」
「瞬間催眠が国を滅ぼす?何で?」
「あ、いえ...どう滅ぼすのか分かりませんが...少なくともそういう意図を持った研究だっていうのはさっき気付きました。」
「貴方と接触していた男が匂わせていたんですか。」
「はい。何かこそこそしてるとは思ってました。やたらと各方面に調整を求めてくるんです。今考えるとあれがひょっとしてと思い返されることもある。」
「…。」
「事実、人が死にすぎですよ…。しかも立て続けです。」
「井戸村さん。」
「…何です。」
「片足突っ込んだらもう引き返せないんです。ことが終わるまでは何としても踏ん張って下さい。」
「...。」
「武器は持ってるだけなら怖くもなんともない。但し意図を持った瞬間それは脅威になる。」
どことなく余裕のある振る舞いを常に見せる相馬だったが、この時の彼は明らかに顔つきが違っていた。
「脅威...。」
「我々は全力であなたを守る。だからあなたも全力で我々に協力してほしい。脅威からこの国を護るために。」
この言葉を聞いた瞬間、井戸村は悟った。
相馬が何者であるかを。
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「はい。」
「その真意は。」
「光定はコミュの相馬の協力者となりました。同じコミュの人間同士、連携して当初の計画通りテロ行為の準備を進めるということです。」
「コミュの相馬?」
「はい。」
「相馬の奴、うまく光定を取り込んだな。」
「はい。テロの予定日は5月3日。今週の金曜です。ギリギリまで光定を泳がせて周辺の連中を炙り出し、一斉検挙としたく存じます。」
「わかった。でも無理は禁物やぞ。あまりギリギリまで引っ張ると撃ち漏らした奴が暴発する可能性がある。」
「承知しています。よって最終的な判断については。岡田課長。あなたに判断を仰ぎます。」
「わかった。それについては理事官にもマサさんから報告しておいてくれ。」
「了解。」
「マサですか。」
電話を切った岡田に声をかけたのは三好だった。
「はい。」
「ギリギリまで引っ張るって、どこまで引っ張る気なんですか。」
「予定日は5月1日。今週の金曜。」
「時間は?」
岡田は首を振る。
「仮に5月1日になったと同時に決行という段取りなら、前日の午前には何らかの判断を求められる。」
「明後日の午前に百目鬼理事官から指示が降りるとすれば、その手続きにかかる時間を加味して…。」
「リミットは明日いっぱいですか。」
腕時計に目を落とした岡田は呟いた。
「27時間…。」
「厳しいですね。」
「まさかテロなんてもんをこの国で計画しとるとはね…。」
「しかも金沢駅。」
「こんなクソ田舎の駅でテロを起こす。そんなモンのために我が国に部隊を相当数隠密上陸させる。」
「どう考えても、ただのテロじゃないですわな。」
沈黙したふたりの前に一棟の古びたマンションがあった。
彼らはお互いの見合って頷いた。
「こちら岡田。今から対象と接触する。」
「了解。」
富樫の応答を受け、二人は眼前のマンションに吸い込まれていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ビショップは空閑。ナイトは朝戸。クイーンは光定…。」
「はい。」
「チェスじゃん。」
「はい。」
「そうだとすれば他にも同じような面子がいるってわけか。」
「キング。ルーク。ポーンです。」
「気になるのは大将のキングだね。」
「はい。」
「そこのところ徹底的に調べてくれるかい。」
「それが手がかりらしきものがないんです。」
「…。」
「相馬はギリギリまで光定を泳がせて、尻尾を出すところを捕まえることを自分に提案しました。」
「泳がせる…。」
「リミットは27時間。27時間後締め切ります。岡田課長も承認済みです。」
「わかった。それまではそちらに任せる。」
「ありがとうございます。」
「朝戸と光定の張り付きは問題ないんだな。」
「はい。」
「空閑は。」
「塾は臨時休業。現在行方を追っています。」
「空閑は朝戸と接触する可能性もある。おそらく金沢市内もしくは近郊にいるはずだ。寝ずに探せ。」
「はい。ですが何分にも人員が不足気味でして。」
「わかってる。それは金と気合でカバーしろ。他部署に協力を仰ぐわけにはいかない。」
「もちろんです。」
「あ、そうだ。」
「何です?」
「捜査員のサングラス着用、徹底してね。」
「はい。」
電話を切った百目鬼は携帯電話を床に叩きつけた。
「クソが!」
「どうする…。急にタイムリミットが設定されちまったぞ…。27時間。27時間だ…。落ち着け。落ち着け、俺…。」
「だから私が東倉病院のヘマを埋め合わせる結果を出せばそれでいいんでしょう。そうすりゃ大蔵省もグチグチいってこない。」
「おい…。」
「大蔵省であろうが、防衛省であろうが、察庁内であろうが文句は言わせません。結果出します。」
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「長い。」
「じゃあどれだけが希望ですか。」
「1ヶ月。」
「無理です。」
「やれ。それくらい早くないと説得力がない。」
「じゃあやります。」30
「1ヶ月どころじゃねぇよ。あと27時間だよ。」
床に落ちた携帯を拾い上げた百目鬼はそれをポケットにしまった。
「最悪を想定してやるだけやりました。あとは俺も現場を信じて27時間走り続けるだけですね。」
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「どうぞ。」
「失礼します。ご依頼のものをお持ちしました。」
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「官房長は何と?」
「閲覧後速やかに処分されたいとだけ。」
「わかった。ありがとう。」
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